軍用地とは?

1960年に締結された日米安全保障条約(新安保条約)で、米軍の日本への駐留が認められました。

この新安保条約とともに日米地位協定も発効、日本地位協定には米軍の日本における施設・区域(米軍基地)の使用や、日本における米軍の地位などが規定されています。

こういった経緯を経て日本国内で、米軍基地および自衛隊施設として使用されている土地を「軍用地」と指しています。

                                                                                                                           軍用地は、陸軍の駐屯地、海軍の軍港、空軍の飛行場に使用されるほか、演習場、弾薬庫。                                                                                                   広義では軍人専用住宅、病院、専用ゴルフ場などに使用される土地も含まれます。                                             

防衛白書によると、在日米軍施設を                                                                                                           ①在日米軍が専用で使用している施設+日米地位協定に基づいて日米で共同使用している施設                                                                                             ②日米地位協定に基づいて米軍が一時的に利用可能な施設                                                                                                                             と分類しています。                                                                                                                                                                 ①米軍専用・共用施設を合わせた規模(2018年3月31日現在)は全国14都道府県で263,176千㎡                                                                                                  ①+②米軍専用・共用施設・一時利用施設を合わせた規模(2008年1月1日現在)は全国31都道府県で1,027,049千㎡                                                                               なお、日米地位協定により自衛隊が共同使用している在日米軍専用施設の土地面積は38,000千㎡になります。                                                    

沖縄での軍用地の割合は?

沖縄の軍用地でみてみると、                                                                               上記①の在日米軍が専用で使用している施設と日米で共同使用している施設(2018年3月31日現在)184,944千㎡、                                                                                     約70%が沖縄県に所在します。

                                                                                                                                                                                                                                                                     沖縄県の離島を含めた全面積の約8%、本島の面積の約14%を占めることになます。                                                                                                                 これは東京ドームの約4,000個分の広さになります。

これらの土地の多くは、国が個人所有の土地を強制的に借地したもので、その上で米軍基地や自衛隊施設として提供されているのが現状です。

軍用地の歴史

1945年8月15日の第二次世界大戦後、(沖縄県では6月23日が記念日「慰霊の日」と制定され、沖縄県内市町村の休日になっています)                                                                  日本の無条件降伏により沖縄県は日本国から切り離され、施政権下において統治し、軍事基地を建設するため「銃剣とブルドーザー」で土地を確保していきました、これが沖縄の「軍用地」の始まりです。                                                                                            

これらの土地は1952年の対日講和条約(サンフランシスコ平和条約)締結まで土地所有者に何の対価も支払われないままに強制使用が続けられていました。

1972年5月に沖縄は日本に返還され、日本政府が日米安全保障条約に基づいて、米国に「軍用地」を提供する必要から「地主」と契約を締結するようになりました。

「ミスター軍用地」桑江朝幸(くわえちょうこう)

出典:桑江朝幸生誕100周年記念特設ページより

沖縄の軍用地を語るうえで、土地連初代会長・桑江朝幸氏を紹介させて下さい。                                                                                                            彼は、1918年(大正7年)沖縄県中頭郡越来村字森根(沖縄市)で生まれました。                                                                                                        終戦後、兵役を終えて沖縄に帰郷すると、子供の頃過ごしていた風景は一変し、米軍基地(嘉手納飛行場)となっていました。                                                                                                   当時30歳になろうかという桑江氏は奪われた土地の権利を守る為、地主の先頭に立って署名運動を展開。                                                                                        更に、国会では戦後初めて軍用地問題について要請陳情し、土地を奪われ、避難民生活を強いられていた者、また、生活に困窮する住民の現状を訴えると同時に、保証実施の要請を陳情して回りました。                                                                                                                                                         彼は周囲から「ミスター軍用地」と称されるほど、土地闘争に全力を注いでいきました。                                                              

米軍が戦時中から戦後にかけて囲い込んだ土地は、沖縄本島の約41%に相当する約495k㎡、故郷の土地を追われた地主は約5万人、その土地は軍用地として無償の強制使用が続けられていました。

そこから、アメリカ政府からの「1年間の借地料はコーラ1本分」「無期限使用料を全額1活払い」等々の理不尽な要求に粘り強く交渉を重ね、ついに、                                                            1958年11月3日「アメリカ政府は一括買い上げを廃止し、沖縄の四原則を承認する」と発表。

土地の使用料の請求から始まった活動は道なき道を行く困難と、2度のアメリカ行きを経て、ついに実を結び、気づけば12年もの月日が流れていました。                                                                                桑江氏はその後も借地料を2倍に引き上げるなど住民の財産権の回復に尽力しました。

詳しくは是非とも桑江朝幸物語をご覧ください。                                                               私は、第四章「ひきさかれたハート」のP34・35のエピソードが大好きです。

土地連HP参照。 

沖縄軍用地の今

こうした歴史を辿って来た沖縄の「軍用地」ですが、2015年3月一般社団法人沖縄県軍用地等地主連合会が「軍用地が沖縄県経済に及ぼす経済効果調査」を公表しました。

この発表によれば、地主の年齢は70代以上が48.2%、60代が29.7%、と8割近くが年金受給者です。                                                                                               年間の借地料は50万~100万未満が21.3%、100万円~200万円未満が16.8%、50万円未満が13.9%という結果でした。                                 沖縄県内で提供されている軍用地料は約900億円以上あり、沖縄県内への経済効果は1647億円にものぼると報告されています。

40年程、軍用地に携わっている方に話しをお聞きすると、当初は色々な県民感情が重なり軍用地売買は「こっそり」行われ、軍用地を所有している事を内緒にしていたそうです。

                                                                                                                                                                              ところが、1987年ブラックマンデーを引き金に1990年前後のバブル景気の崩壊、2008年のリーマンショックで株価の暴落を経験した富裕層達が、ローリスク・ミドルリターンの「軍用地投資」の可能性に気付き始めました。

2012年「アベノミクス異次元緩和」で長期金利が大幅に低下、軍用地の利回りが有利に見えてくると軍用地の価格が上昇。軍用地ローンを利用して、買い足していく沖縄県民が多数現れました。                                                                                                                                                            すると、沖縄県外の投資家や富裕層にも少しずつ知られるようになり、2018年度では軍用地所有者の県外在住者が4千人を超え、軍用地地主全体の1割に迫ってきました。                                                                        地主の高齢化により相続や贈与が行われ、相続や贈与を受けた子や孫が軍用地を手放す機会が多くなってきているようです。                                                                             そして段々と市場に軍用地が出てくる様になり、沖縄の今では新聞広告やTV、ラジオ、ネットで軍用地売買の情報が普通に見る事が出来るようになりました。                                                                               2020年のコロナショックでもほとんど影響を受ける事なく借地料が値上がり続けました。 

ここ30年借地料はずっと上昇してきていますが、土地代「倍率」はどうでしょうか。                                                                                                    沖縄の軍用地は利回りから逆算して価格が決まる「収益還元価格の金融商品」とも言われてます。

借地料が毎年上昇しているので土地代金「倍率」も上がっているのですが、(施設や面積で倍率の幅があります)市場では需要(買手)が圧倒的に多く、供給(軍用地)が圧倒的に少ない状況です。                                                       それにより「倍率」もどんどん加熱気味に上がっていったそうです。

ところが、2022年ロシアのウクライナ侵攻やアメリカの景気過熱でインフレが進行、欧米の金融当局は金利の引き上げに動きました。                                                              これにより日本でも長期金利が上がり始めました。                                                                                                                                    これが原因か分かりませんが、2022年から2023年にかけて那覇空港をはじめ、各施設で倍率が下がる現象が起こったそうです。

2023年に軍用地の競売が急増した事も教えて頂きました。                                                                                                                                       沖縄の金融機関では軍用地ローンという制度があります。これは所有している軍用地を担保に限度額を設定し、資金の使い道は自由なフリーローンです。専用の通帳とカードがあり、魔法のカードと言われてました。

計画的に使用すればとても便利な制度ですが、「借金」と「融資」「浪費」と「消費」をしっかり区別しないとせっかく先祖から受け継いだ土地を手放す事になってしまいますね。

最後に

私も2023年4月に沖縄に移住して資産運用や相続税対策で沖縄の不動産を取り扱ってきましたが、この軍用地の事を聞けば聞くほど、調べれば調べるほど安心安全な資産運用、長期保有で確実に資産を増やせると感じました。

更にこの特殊な土地「軍用地」は固定資産評価額が低く、平均して半分程度の評価額になり相続税対策に最適です。

この沖縄ならではの「軍用地」はまだまだ知られていないと感じてますので、ご縁ある方にお伝えしたいと考えてます。

上記の歴史を知って頂き、先人のまごごろとご縁のある土地に感謝して、恵みの循環の輪に入る。そしてご自身もまた、しっかり資産形成をして次の世代に渡す。                                                                            こういった素敵な循環をまわしていくお手伝いが出来ると幸いです。

参考文献「軍用地投資入門」仲里圭一